PROGRAM
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アラン・プラテル les ballets C de la B 作品集

映像上映

『Out of Context-for Pina』 Photo:Tsukada Yoichi

国籍とジャンルの壁を超えた創作活動で舞台芸術界を牽引してきたベルギーの鬼才、アラン・プラテル。制度や慣習の外にあるものに目を向け、奥深い人間のドラマを描き出すプラテルの作品は、私たちを分断するあらゆる境界線の「向こう側」を照らし出す。横浜ダンスコレクション2021で待望の再演を予定していた『Out of Context – for Pina』をはじめ、近年の活動を特徴づける4作品をセレクト。うち3作は日本初公開となる。「このダンスは世界のためのものであり、世界は皆のためのものである」——世界中で進む分断をこれからいかに乗り越えていくのか。プラテルの作品群は、身体の移動がままならない中でも目の前の現実の「先」を想像し、創造していくための鍵を与えてくれるに違いない。

  • 2.12 [fri]
  • 2.13 [sat]
@横浜にぎわい座 のげシャーレVOD配信あり ※配信期間:2021.2.15 (Mon)~21(Sun)
『Coup Fatal』© Chris Van der Burght

11 :00~『Coup Fatal 』(2014) [上映時間:1時間55分]
青いプラスチックの椅子を持って軽やかなステップで登場するのは、コンゴ民主共和国の首都キンシャサの13人のミュージシャン。バロック音楽とコンゴのポップスを見事に融合させた陽気な演奏とダンスで、観客を歓喜のリズムの渦へ巻き込んでいく。「武器を捨ててお洒落をしよう」と色鮮やかな紳士服に身を包むサプールのように、困難にも負けず全身で生き生きと喜びを表現することが、なによりも強い「抵抗」のメッセージとなる。そして政治的立場を超えて一体となれる芸術を通じてこそ、舞台を半分に分かつ薬莢のカーテンの向こう側と繋がることができるのかもしれない。

『Gardenia』© Luk Monsaert

13 :30~『Before the last curtain falls』(2014) [上映時間:1時間30分]
半世紀以上の年月の中で、愛や失望、屈辱、喜び、自己疑念等あらゆることを経験し、現在は社会の片隅でひっそり暮らすトランスジェンダーのパフォーマーたちが、アラン・プラテルとフランク・ファン・ラッケが設えた大舞台に上がる。スポットライトを浴びて堂々と佇む彼らは、どのような人生を送り、今何を思うのか——。
5大陸25ヶ国で大喝采を博した『Gardenia[クチナシ]』の舞台裏を写したドキュメンタリー。6名の魅力的な出演者の物語は、何歳になってもリスクを負って新たなことに挑戦し続けること、そして自分らしく生きることへの勇気を与えてくれる。

『Out of Context』© Chris Van der Burght

15:30~『Out of Context – for Pina』(2010) [上映時間:1時間40分]
コントロールから外れたような発作的な動き、奇妙に歪みねじれた身体性、剥き出しの衝動。治療療育者としての経験が反映されたアラン・プラテルの振付言語は、観る者の価値観をエモーショナルに揺さぶる。一体何が「異常」で、何が「正常」なのか?意思を伴った動きだけが「ダンス」なのか?
プラテルの作品の特徴とも言える大掛かりな舞台美術、衣装、生演奏を一切取り払った舞台に現れた9名のダンサーは、ずば抜けた技術と強烈な個性、そしてチャーミングな「歪さ」を併せ持ち、一瞬たりとも目が離せない。初演から10年、敬愛する振付家ピナ・バウシュを想いながら今なお発展を続ける名作を再び。

『nicht schlafen』© Chris Van der Burght

17:30~『nicht schlafen』(2016) [上映時間:1時間50分]
カタストロフィの先に一条の希望を見出そうとする大作。作曲家グスタフ・マーラーの交響曲を創作の出発点に、激動と混乱の時代であった19世紀末から20世紀初頭と現代とを重ね合わせ、男性/女性、黒人/白人、ユダヤ人/アラブ人、ダンサー/歌手といったアイデンティティの違いを超えた、集団としての人間のありようを描き出す。ぶつかり合い支え合い、刻一刻と変化する関係性。3頭の死馬が横たわる荒涼とした大地で、ダンスが体現するのは生への渇望と失われた調和への憧れか。舞台装置は現代美術家のベルリン・デ・ブリュッケレ。

アラン・プラテル

アラン・プラテル

1956年ベルギー、ゲント生まれ。治療教育の専門家であり、演出を独学で学ぶ。1984年友人や親戚と共にグループ(現 les ballets C de la B)を創設。「Emma」(1988年)は、プラテルが演出に徹する始まりとなった作品であり、「Bonjour Madame」(1993年)以降、「La Tristeza Complice」(1995年)、「バッハと憂き世 Iets op Bach」(1998年)等の作品により、カンパニーは世界をリードする存在となる。現在、カンパニーは様々な振付家の為の芸術プラットフォームとして発展し、多様なジャンル及び背景をもったアーティスト達に、ダイナミックな創作の機会を与えるという原則に従い活動を展開。モットーは「このダンスは世界のためのものであり、世界は皆のためのものである。」www.lesballetscdela.be/