PROGRAM
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HOTPOT. Seoul

第6回 HOTPOT 東アジア・ダンスプラットフォーム


  • 12.14 [Sat] 16:00
@KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ

<プログラム> 韓国拠点アーティストによる3公演

チョン・ミスク舞踊団『Bow』


© BAKI

「Bow」(お辞儀)というアジアの身振りをめぐって、振付家チョン・ミスクは、韓国文化の伝統と現代的な舞踊のムーヴメントが融合した独創的な作品を創造した。この頭を下げて上半身を傾ける動きに潜む心理、それを交わす者たちの関係性の繊細な分析は変化に富んだ振付の動機となると同時に、観客の想像力も刺激する。繊細な色彩とフォルムの衣裳、扇子等の道具や美術が伝統的な美学を伝える一方で、振付は慣習と創造、受容と能動の二つの極を揺れ動き、興味深い対照をなしている。「韓国の文化と伝統をコンテンポラリーダンスのキャンバスの上で楽しむ」と振付家自身が語るこの作品は、韓国舞踊評論家賞はじめ国内外で高い評価を受けている。

『Bow』
振付:Misook Jeon
出演:Sdt Byeol Lim, Jumi Lee, Yoon Joo Han, Hong Lee, Jeongeun Lee, Namkeun An, Jongkyung Im, Nara Yoon, Haneul Jung
作曲:Jaeduk Kim
照明デザイン:Jung Wha Kim
衣装:Insook Choi
スチール:BAKI, Gunu Kim
プロデュース:Jisoo Gook

ソ・ヨンス<Mujer Dance Company>『Home within Home』



韓国のポップカルチャーが世界を席巻する一方で、芸術家たちは伝統芸能の現代化を探求している。ソ・ヨンス振付の『Home within Home』(2021)も、この探求の中にある。「家の中の家」とは「伝統と近代性の和解と包括」の比喩であり、振付家は伝統舞踊、特にサルプリ(白装束のシャーマンの踊りを起源とする韓国伝統舞踊)の分析から特徴的なムーヴメントを抽出し、それらを変形、発展させて新しい振付を作り上げた。統一感がありながらも質の多様なダンサーの動き、テクニックも非常に見応えがある。コンテンポラリーダンスの視点から伝統を考察したこの作品は、韓国舞踊評論家賞を受賞し高く評価されている。

『Home within Home』
振付:Yuensoo Seo
演出:Yochan Kang
出演:Soyeon Kang、Mira Jeon、Hayeon Jeong、Sol Jin、Jisoo Yang、Minjoo Kim、Yebeen Song
音楽:Jaeduk Kim

クム・ベソプ<Chumpan Yamoo>『Worn out』



2009年からソウルを拠点に活動する Chumpan Yamoo は、社会的問題に切りこむコンテンポラリーダンスカンパニー。2013年から20年に韓国社会で孤独に暮らす人間をテーマにした5作品を創作し、21年に5時間30分の連続上演を行った。ソロ『Worn out』はこの連作のひとつ。外界との接触を失い、人と物とのコミュニケーションの感覚が擦り切れ、次第に男も擦り切れ物に同化していく。『Worn out』は空虚な空間で展開する、プラスチック袋という安価で使い捨てのオブジェと男のデュオである。振付家クム・ベソプは都市住民の孤独を直視し、崩壊の階梯を「分離の創作コンセプト」による振付で描く。

『Worn out』
振付・出演:Baesub Keum
ドラマトゥルク:Poongnyun Kim(Sanghee Kim)
音楽:Ohmbre(Heonki Kim)
照明:Yooseok Kim
舞台監督:Kyenam Kim
助成:韓国文化体育観光部、韓国文化芸術委員会、Korea Arts Management Service

  • 第6回 HOTPOT 東アジア・ダンスプラットフォーム

    ダンスのつくり手をサポートする東アジアの3つのフェスティバル、City Contemporary Dance Festival(香港)、SIDance(ソウル)、ヨコハマダンスコレクションが協働して2017年から展開する「HOTPOT」の6回目の開催。東アジアを拠点に活躍する11組の振付家が作品上演やプレゼンテーションを行い、国内外のプログラマーとの対話・交流プログラムに参加します。

    主催:ヨコハマダンスコレクション、City Contemporary Dance Festival、SIDance
    共催:YPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング実行委員会)
© BAKI

チョン・ミスク

梨花女子大学で修士号を取得した後、ロンドン・コンテンポラリーダンススクールで学ぶ。1981年から98年までダンスカンパニーTAM の振付家、ダンサーとして活動し、1998年から韓国国立芸術大学で教え、同年に Jeon Misook ダンスカンパニーを設立。『Adieu My Love 』(2001)、『What’s going on』(2005)、『Stay there』(2006)、『Amore Amore mio』(2010)、『Bow』(2014)等、多くの作品を発表する。モダンダンスの実験性を表現し、振付の繊細な構造および構成、テーマに関する哲学的な視点、人生の両義性を探求する作品は高い評価を受け、韓国舞踊批評家協会賞を3回受賞し、他にも2006年ソウルダンスフェスティバル等受賞多数。オランダやアメリカのフェスティバルにも招聘されている。 

ソ・ヨンス

漢陽大学舞踊学部で博士号を取得し、同校でダンスの指導にあたると同時に振付家として活動を始め、コンテンポラリーダンスの視点から韓国の伝統的な舞踊のルーツの再解釈を行い、マルチディシプナリーなアプローチによって現代との調和を探る。芸術監督を務める Mujer Dance Company は、多様な作品において西洋を中心とする近代的、合理的、男性的な世界に対抗する力としての女性的なものを探求し、さまざまな要素を用いて観客の共感を呼び覚まし、韓国舞踊の革新を目指す。2021年に『Home within Home』が第41回ソウルダンスフェスティバルのグランプリ、ビューティフル・ヴィジョン・アワードを受賞、2023年には『Stride, See and Stand』が韓国舞踊批評家協会賞を受賞した。

クム・ベソプ

Chumpan Yamoo は、2009年に設立されたソウルを拠点とするコンテンポラリーダンスカンパニー。多様なジャンルを複合する実験的なスタイルを追求し、人間同士の関係性にフォーカスした創作を行う。2013年から2020年に「韓国社会で孤独に生き、頼る人も物もない人々」を共通のテーマとする5つのソロダンスを発表。『As for Me』(2019)が高い評価を受け、そこから「分離のクリエイティヴ・コンセプト」という独自の方法論を創作に適用している。作品を解体し、分離から生まれた余白の存在によって作品中のさまざまな要素の予定調和は避けられ、同時に観客はこの余白に自身の感覚、感情、経験をもって介入し、自由に想像し、解釈することが可能となるのだ。