2021年12月 YDCコンペティション I で受賞し、フランス国立ダンスセンター滞在を経た中川の新作は死生観をテーマとし、受賞作『my choice, my body,』に連なるという。発想の源となったのは、「NF F NS NC」というラテン語の墓碑。「我かつて存在せず、そののち存在し、いまは存在せず、思い悩むことなし」という言葉は、どこからか訪れた生命が身体に宿り、やがてそこから去る、根源的な生と死のイメージを振付家に喚起した。稲の実りのイメージ、音楽家との協働による和楽器を取り入れた音楽、アジア的な発想の衣裳、そして日常の動作や腹部に重心を低く置く日本舞踊の動きが重なり、<水中めがね∞>の新境地を拓くだろう。
中川絢音<水中めがね∞>『しき』
受賞者公演
リュウ・イリン『… and, or…』
受賞者公演
- 12.07 [Sat] 17:00
- 12.08 [Sun] 15:00
中川絢音<水中めがね∞>Nakagawa Ayane<Suichu-megane∞>
『しき』
- 演出・振付: 中川絢音(<水中めがね∞>)
- 出演: 岩本大紀(<山海塾>)、岡本 優、小川莉伯、LINDA、(以下、<水中めがね∞>)金 愛珠、根本紳平、中川絢音
- 振付助手: AYUBO
- 衣装: 清川敦子
-
助成:
公益財団法人セゾン文化財団
中川絢音
演出家、振付家、ダンサー。バレエと日本舞踊、ストリートダンスを学び、桜美林大学で演劇を専攻する。在学中の2011年にカンパニー<水中めがね∞>を立ち上げて振付作品の発表を開始し、タブーを恐れぬ身体表現が注目される。YDC では2017年にコンペティション II、2018年にコンペティション I のファイナリストに選出、2021年12月のコンペティション I で『my choice, my body,』が審査員賞、在日フランス大使館賞、アーキタンツ・アーティスト・サポート賞を同時に受賞する。日本舞踊家・藤間涼太朗との協働プロジェクト等、独自の視座から日本と西洋、伝統と近代の交錯する身体を探求し、個人と社会の関係を考察する実験性に満ちたダンスを発表している。
リュウ・イリンLiu I-Ling
2022年に YDCコンペティション I で審査員賞を受賞したリュウ・イリン振付『…and, or…』は、極めて密度の高い25分間のデュオであり、振付家は関係性の構築に必要なすべての条件、その選択、それがもたらす帰結をダンスとして探求する。男女二人が対峙してムーヴメントが生まれるが、ダンスは身体の接触だけではなく、互いの距離や床や空気との関係を含む身体を囲んだあらゆる要素との反応から生まれる。音楽を使用しないため、ダンサーの息遣いも足音も衣擦れの音も観客の耳に届き、目と意識は刻一刻と変化する2人のバランスに惹きつけられ、観客もダンスの一部になる。静かな驚きに満ちた作品の、新バージョンの上演。
『… and, or…』
- 振付: LIU I-Ling
- 出演: LIN Jyun-Yi & HUNG Wei-Ting
- 照明デザイン: LO Yan-Yi
- 舞台監督&照明コーディネーター: SHYUE Joanne
- 衣装: YANG Yu-Teh
- リハーサルアシスタント: CHOU Ai-Hsuan
- ツアーマネジメント: HUANG Wen
リュウ・イ リン LIU I-Ling
台湾出身のコンテンポラリーダンスアーティスト。2005年台北国立芸術大学卒業後、複数のカンパニーで踊り、2007年から11年間 Bill T.Jones カンパニーのダンサーとして活動する。振付家としては2017年にソロ『GENG』が台湾アーツ・アワードにノミネートされ、2022年には YDCコンペティション I 『… and, or…』で審査員賞を受賞。振付は追憶やトラウマ、社会の考察や身体技法の再定義をテーマとし、台湾出身の多様なアーティストとコラボレーションも行う。2019年には映像作家スー・ホイユーと協働した『The White Waters』を発表し、2020年には現代美術家リー・ミンウェイのプロジェクト『Our Labyrinth』に参加してメトロポリタン美術館とテート・モダンでパフォーマンスを行った。台北芸術大学でも教えている。